アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下とアレルギー体質による過敏反応が関与し、痒みを伴う湿疹が慢性的に悪化と改善を繰り返す疾患です。遺伝的な傾向と生活環境の要因が重なり発症します。

アトピー性皮膚炎の原因

悪化にはアレルギー反応とバリア機能障害が関係します。乾燥、発汗、皮膚の汚れ、ストレス、掻く行動は共通の悪化要因です。
また、室内のほこり、寝具やぬいぐるみに付着するダニ、ペットの毛、石鹸やシャンプー類の刺激が原因となる場合もあります。

アトピー性皮膚炎の治療

当院では、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき、症状に合わせて標準治療を行っています。
日常のケアを重要視し、保湿剤やステロイド外用薬の塗り方、内服薬の服用タイミングなども丁寧に指導しています。
症例に応じて光線治療(エキシマレーザー)や新しい治療薬(デュピクセント注射、コレクチム軟膏など)の提案も行っています。

外用療法

保湿剤と生活指導を基本とし、ガイドラインに沿って症状に応じた強さのステロイド外用薬、またはコレクチム軟膏やプロトピック軟膏などの非ステロイド外用薬を使用します。
経過によっては、再発予防としてプロアクティブ療法を行う場合があります。
必要に応じてエキシマ光線療法、難治例ではデュピクセント注射の提案も行っています。

エキシマ光線療法

短波長の紫外線を患部に照射し、過剰反応している皮膚の炎症を沈静化させる治療です。従来よりも効果が高い波長を使用することで、肘や膝など治療が難しかった部位にも高い治療効果が期待できます。

デュピクセント注射

デュピクセント注射は、アトピー性皮膚炎で過剰に働くIL-4/13を抑制し、かゆみや皮疹を改善する治療薬です。
2023年9月より小児にも適応が拡大され、生後6か月以上から使用できるようになりました。

当院は生物製剤承認施設として多くの患者さまへデュピクセント治療を行っており、初回導入時も安心して受けていただける体制を整えています。
難治性アトピーでお悩みのお子さまや保護者の方は、お気軽にご相談ください。

TARC検査

TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)は、アトピー性皮膚炎の病勢を客観的に評価できる血液検査です。
重症なほど数値は高く、改善すると低下します。皮膚所見が良く見えてもTARCが正常化していない場合、治療を早期に中止すると再燃しやすくなるため、月に1回程度の継続検査が推奨されます。
治療終了のタイミングを判断するうえで非常に有用な検査です。

内服薬による治療

抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用し、かゆみやアレルギー症状を抑えます。必要に応じて、症状が落ち着いている時期にも予防目的で服薬することがあります。
12歳以上ではリンヴォックなど高い効果を示す保険適用の内服薬もあり、当院でも治療が可能ですのでご相談ください。

湿疹を早期に抑えることは、色素沈着を防ぐためにも重要です。

保湿

皮膚の乾燥はバリア機能を低下させ、症状の悪化や治りにくさにつながります。
保湿剤には、水分やセラミドを補うもの、油分で水分の蒸発を防ぐものなどがあり、クリーム、ローション、軟膏など剤形によって使用感が異なります。
自身の皮膚に合う保湿剤を選ぶことが大切で、症状が落ち着いている時期でも頻回に保湿を行うことが重要です。